若年性認知症/早期発見・治療の流れを

8月23日

65歳未満で発症する「若年性認知症」は、一家の働き手を失い経済的な問題を伴うなど、高齢者の認知症とは違った多岐にわたるサポートが必要となる。その患者・家族を支える全国初のワンストップ相談窓口「東京都若年性認知症総合支援センター」(目黒区、駒井由起子センター長)が5月にオープンし好評だ。寄せられる相談や利用者の声から、患者・家族を取り巻く支援のあり方や今後の課題などを探った。

『「道筋見え不安解消」』

『東京都が全国初 ワンストップ相談窓口が好評』

『治療、仕事、財産管理、介護、諸手続き』

都内の東部地区に住む合田昭夫さん(60)(=仮名)は、勤めていた会社を今年6月末で定年退職した。妻・早苗さん(=同)はほどなく、家で四六時中一緒に過ごす中で昭夫さんの認知症状の進み具合に驚き、「この先、どうなるんだろう」と途方に暮れて、7月上旬に同センターにダイヤルした。

うつ病寸前の抑うつ状態にあった早苗さんは、不安になると受話器を握る。「主人が字を書けなくなっているんです」「これから経済的にどうしたら……」「今のお薬で大丈夫?」「病院は変えた方がいいですか?」――。相談回数は、3回の直接面談も含め、1カ月余で14回に上った。

8月中旬、合田夫妻はそろって同センターに来訪。落ち着いた早苗さんの姿にコーディネーターが「表情が明るくなり安心しました」と声を掛けると、介護保険や障害年金の手続き、専門病院への通院などの対応も整ったためか、「今後の道筋が見えてきて、不安がなくなりました」と笑顔を見せたという。

同センターは、2009年度から3年間、都の若年性認知症支援モデル事業を委託されたNPO法人「いきいき福祉ネットワークセンター」が引き続き運営を担う。

若年性認知症の患者は、老人性と違って働き盛りが多く、失職して経済的に影響が出たり、子どもへの教育や心理的影響、さらに、配偶者の介護負担も大きいと指摘される。都のモデル事業の調査でも、家族の約7割が「抑うつ状態」だったという。

このため、同センターでは、専門コーディネーターが(1)専門医情報の提供や治療の助言(2)勤務先との調整(3)財産管理の相談(4)訪問・通所サービスの情報提供(5)各種社会保障手続きに関する助言――などの相談を一括して行っており、必要なら各種手続きの窓口への同行支援も行うなど、きめ細かな対応をしている。

相談は無料。駒井センター長は「若年性認知症と診断された患者・家族の多くは、どこに、何を相談すべきか、どんな支援があるのかすら知らないのが実情です。重度になって、ようやく相談するケースが多いのですが、生活の質を長く保てるよう早期にお電話を」と呼び掛けている。

『個別メニューで機能訓練』

『平均7~8カ月 住み慣れた地域へ移行も』

同センターには、若年性認知症患者などの専門通所施設も併設されている。

1日10人の少人数制で現在、都内を中心に40人弱の利用者が登録。皆65歳未満のため、同年代での「地域サークル」的な雰囲気だ。

午前10時の「朝の会」でスタートし、自主性を尊重して、当日の活動は趣味や料理、既存のプログラムなどの中から話し合いで決める。この日、部屋の壁には「吉田、五輪3連覇!」「なでしこ銀!」などの新聞見出しや月日・曜日、天気、昼食メニューなどが掲示されていて、それをノートに転記するなど、専門スタッフのサポートを得て個別に組まれた訓練メニューをそれぞれこなした。

また、午後は施設から出て、公園で元気にラジオ体操。さらに、道具を器用に使って地域の清掃ボランティア活動を行い、心地よい汗を流した。

最後の「振り返り」の時間は、各自がノートに一日の活動記録を書き出す記憶訓練で終了。若年性の人は高齢者向けの施設になじめずに、「地域に居場所がない」という声が多いが、ここの利用者からは「ここに来て、できることも増え、元気を取り戻した。楽しくしゃべれる仲間がいて、安らぎの場です」「週1回ですが、皆、同じ境遇の人なのでホッとします」など喜びの声が聞かれた。

同センターでは、利用者の地域移行支援のため、居住地域のケアマネジャーや包括支援センターの職員に直接つなぐなど努力を続けており、モデル事業の3年間でも、25人の利用者が平均7~8カ月で地域移行できたという。

同センターの設置を推進してきた都議会公明党の野上純子副幹事長は「多摩地域に同様のセンターをもう一つ整備し、住み慣れた地域での居場所づくりも支援していきたい」と強調。医師で党厚生労働部会長の渡辺孝男参院議員は「都の取り組みは、相談対応と居場所づくりで極めてニーズが高い」と評価し、「若年性認知症の対策は、早期発見・治療への流れをつくることが重要だ。専門職による『初期集中支援チーム』を各自治体に設置し、認知症が疑われる家庭に派遣できる体制整備を急がせたい」と語っている。

◆若年性認知症 18~64歳で発症する認知症の総称。65歳以上の老人性認知症と同様、アルツハイマー病や脳血管型、前頭側頭型、レビー小体型などがあり、もの忘れ、言語障がいなどの症状が現れる。患者数は全国で推計約4万人。

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