広がれスポーツの輪/夢は実現できる!パラリンピック選手と生徒が交流/思いやり、努力の大切さを学ぶ/生徒「目標持ち、小さな積み重ね」忘れない/東京都

10月20日

 国民が心身ともに健康で文化的な生活を営む社会をめざし、スポーツ庁が10月に発足した。同庁の意義について、初代スポーツ庁長官の鈴木大地氏に聞いた。また、国はスポーツ関連政策の一つとして、公明党の推進により、障がい者への思いやりや努力の尊さを学ぶ「パラリンピック教育」を来年度から充実させる。どのような取り組みが展開されるのか。東京都が実施しているパラリンピック教育の現場を訪ねた。

 『始動スポーツ庁』

 『五輪に向けアスリートの支援など振興策の“司令塔”担う』

 スポーツ庁は文部科学省の外局として1日に発足。同省や内閣府、国土交通省など7府省から人員を集め、トップ選手の支援に取り組む競技スポーツ課など5課121人体制でスタートした。2020年東京五輪・パラリンピックを見据え、選手の強化や障がい者スポーツ、地域スポーツの振興など、複数の府省に分かれる関連施策の“司令塔”役を担う。初代長官は、1988年ソウル五輪100メートル背泳ぎ金メダリストで、日本水泳連盟会長も務めた鈴木大地氏。

 同庁は、2011年に議員立法で成立した「スポーツ基本法」の付則に設置検討が盛り込まれ、今年5月に同庁の設置法が成立し、発足に至った。

 『鈴木大地・初代長官に聞く/国民の健康増進、地域発展にも』

 初代スポーツ庁長官に就任した鈴木大地氏に、同庁の役割と今後の展望について話を聞いた。

    ◇

 ――スポーツ庁の意義や役割について教えてください。

 スポーツの持つ力を幅広く発信することで、その魅力を国民に理解していただき、有益な施策を展開していくのが狙いです。そのために、2020年の東京五輪・パラリンピックを見据えたトップアスリートの支援はもちろんのこと、スポーツによる国民の健康増進を図り、年間40兆円を超えるという医療費の抑制にまでつなげたい。

 障がい者スポーツの振興に力を入れるとともに、スポーツを通じた地域の活性化や国際交流なども積極的に進めていきます。

 ――公明党は、高齢者から子どもまで身近な場所で気軽にスポーツを楽しめる施策を重視しています。

 地域スポーツの振興という点では、各地のスポーツ少年団や総合型地域スポーツクラブの発展も重要ですし、民間のスポーツクラブの存在もあります。民間企業の追い風になるような施策も考えていきます。指導者の確保が難しいなど足踏み状態の団体も少なくありません。幅広い分野から、スポーツの指導をされている方の協力を得るとともに、地域独自の取り組みを後押しし、多くの国民がスポーツに親しめる場を提供していきたい。

 また、教育現場における体育のあり方については、運動が得意、不得意関係なく、誰もが体を動かすことを楽しめる指導法の研究が重要になってきます。運動の持つ魅力がうまく伝わるような指導法、教員の育成を視野に入れたいと思います。

 ――一方、スポーツ庁は当初の想定と異なり、スポーツ関連の権限や財源が一元化できませんでした。

 「縦割り行政の弊害が残るのでは」と懸念されているかもしれませんが、多くの関係者との意見交換を通じて、より良い方向に進めていきます。

 ただし、スポーツ庁の役割として、必ずしも国の予算を多く獲得さえすればいいとは思っていません。米国オリンピック委員会(USOC)は連邦政府からの財源に頼らず、寄付金や事業収益などで独自に財源を運用しており、それが彼らの誇りとなっています。日本の各種スポーツ団体も、将来的には、多くの民間から協力をいただきつつ、自主・独立した運営が求められてくるでしょう。そうした動きをスポーツ庁としてもサポートしていきたいと考えています。

 ■障がい者スポーツを通じ、思いやりやフェアプレー、努力の尊さなどを学ぶ教育。具体的には、パラリンピックに関する知識、選手の体験、スポーツの価値などを学ぶ。

 「私が好きな言葉は、『If you can dream it, you can do it』(夢は実現できる)です」「皆さんに伝えたいのは、夢(目標)を持つ大切さです」――。車いすテニスの齋田悟司選手(株式会社シグマクシス)の言葉に、子どもたちは真剣に耳を傾ける。東京都の葛飾区立新小岩中学校で開かれた「夢・未来」プロジェクトの一コマだ。

 「夢・未来」プロジェクトは、オリンピックやパラリンピックなどに出場した一流アスリートとの交流を通じて、子どもたちにスポーツの素晴らしさ、夢や希望を持つ大切さを伝えることをめざしている。東京都は今年度、都内の幼稚園や小学校、高校など全122校にアスリートらを派遣している。

 取材で訪ねた日、同校の生徒らが体育館で齋田選手を出迎え、講演と車いすテニスの体験が行われた。同校のプロジェクトには、公明党の野上純子都議、久保洋子葛飾区議も参加した。

 齋田選手は、小学生の時に病気で左足を失った。「毎日をどう過ごせばいいのか」とふさぎ込みそうな時、スポーツをきっかけに自信を取り戻したという。車いすテニスを始めたころはなかなか試合で勝てず、その度に、自分の課題を見つけ、次の大会でその課題を克服しようと練習を重ねた。

 当時の心境を交えながら実体験を語る齋田選手の姿に生徒らも真剣な表情だ。

 齋田選手は5大会連続でパラリンピックに出場。2004年のアテネ大会の車いすダブルスで金メダル、08年の北京大会でも銅メダルを獲得するなど、世界でも有数の車いすテニスプレーヤーだ。

 講演後、齋田選手が見せる剛速球のサーブに会場全体が沸いた。1年生を対象に、齋田選手と車いすテニスを体験できるコーナーでは、多くの生徒が参加を希望。生徒は、競技用の車いすの操作に苦労しながら、齋田選手が打つボールを打ち返していた。

 一流アスリートとのプレーとあって、初めは生徒にも緊張感があったが、実際にラリーが始まると、生徒の顔にも笑顔が。
 講演を聞いた生徒は「齋田さんから学んだ『目標を持つことの大切さ』『小さな努力を積み重ねること』を忘れず、自分の夢に向かって進んでいきたい」と声を弾ませていた。

 齋田選手は「車いすテニスを理解してもらい、一緒にプレーできたことは、有意義な時間だった。車いすテニス以外にも、多くの障がい者スポーツに興味、関心を持てるきっかけにしてほしい」と語っていた。

    ◇ 

 2020年には、東京五輪・パラリンピックが開催される。

 パラリンピックを契機に、障がい者への理解を進め、障がい者が身近な地域においてスポーツに親しむことができるよう、障がい者スポーツの普及・促進が進められている。

 国のスポーツ予算は、10年間で2倍近くになった。来年度、障がい者スポーツの普及・振興では、パラリンピック教育の充実が図られるほか、誰もが参加できる地域スポーツクラブの設立や障がい者アスリートの発掘・育成などが行われる。

 公明党は、スポーツ庁の設置検討を盛り込んだ「スポーツ基本法」の成立をリードし、スポーツに参加しやすい環境の整備を進めてきた。また、浮島智子衆院議員は、国会でパラリンピック教育を小中学校などの学習指導要領に盛り込むことを提案。新たな学習指導要領は20年度以降に小学校から順次実施される。=「広がれ スポーツの輪」は随時掲載します。

(15年10月20日 公明新聞より)

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