平成20年厚生委員会(2008年11月11日)墨東病院の産科について等

平成20年厚生委員会(2008年11月11日)


◯野上委員

 
 厚生委員会での初質疑となりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 初めに、墨東病院の産科の救急問題について質問いたします。
 先月、江東区内の産婦人科の患者さんが、八つの医療機関に受け入れを申し込んだけれども、受け入れ可能な病院がなかなか見つからないで、最終的に墨東病院に搬送され、赤ちゃんは無事出産されたものの、残念ながらお母さんが脳出血という形で亡くなられるという悲しい事態が起きました。改めて、亡くなられた方及びご遺族の皆様に心より哀悼の意を表します。
 この件につきましては、さきの公営企業会計決算特別委員会第二分科会でも、我が党の中山議員から、都の周産期医療の現状等の質問がされたところであります。この周産期医療体制の問題は、東京都だけではなく国レベルの問題であり、かつ救急医療体制との連携の重要性もはっきりしてまいりました。
 都議会公明党は、この問題を極めて重要なことととらえまして、十月二十三日に周産期医療体制の強化を求める緊急申し入れを都知事に対して行ったところでございます。
 周産期医療体制の強化には、まず産科医師を初めとする医療スタッフの確保、これが一番大事であります。都立病院として、できることから緊急に対策を講じていくべきであると考えます。
 総合周産期母子医療センターとして重要な役割を担う墨東病院が、今回のように、常時二人以上の産科医がいるはずだったのに、当直医が一人しかいない深刻な産科医不足に陥っていたという今回の事態のその後なんですけれども、医師の当直体制は改善されたのでしょうか。

 

〇及川経営企画部長

 墨東病院におきましては、総合周産期母子医療センターとしての確実な体制というものを確保するため、当面十一月については、できる限り二名による当直体制をとっていきたいということといたしまして、具体的に申し上げますと、土曜日については、十一月ですが、五日間のうち四日間を二人体制といたしました。日曜日、祝日につきましては、七日間のうち三日間は全日二人体制とし、二日間は夜間当直のみ二人体制ということで組んでおります。
 また、今回の事案では、一人でレジデントが当直をしていたということを受けまして、十一月は、一人当直となった場合には必ず常勤医師が当直体制をとるという体制をとるなど、現時点ではございますけれども、とり得る最大限の緊急の措置を講じたところでございます。

◯野上委員

  限られた医師を何とかやりくりして緊急に体制を整えたことというのは、評価をいたします。しかし、現場の墨東病院のお医者さんにさらに負担を負わせるようなことになりはしないかと、医師が疲弊して、今ある体制すら維持できなくなるのではないかということが心配されます。
 今回の問題は、墨東病院だけではなくて、ハイリスクの分娩が増加している中で、東京都の周産期母子医療センターの機能が十分とはいえない状況が背景にあるということがいえるのではないかと思います。
 こうした状況の打開を検討するために、十一月五日に東京都周産期医療協議会が緊急に開催されたと聞いておりますが、報道によりますと、その協議会において、区東部の唯一の総合周産期母子医療センターである墨東病院を支援する策が話し合われたようでございますが、具体的な内容についてお聞きいたします。

 

〇及川経営企画部長

 今回の周産期医療協議会は、東京緊急対策Ⅱというものが先日発表されましたけれども、そこに盛り込まれました緊急対策の一環として開催されたものでございます。協議会には、リスクの高い妊産婦さんに対応する総合周産期医療センターの専門医等の二十人の著名な先生方が参加しております。
 協議会では、今回の墨東病院における母体搬送事案を契機に、東京の周産期医療体制をめぐるさまざまな問題が議論されております。中長期的課題といたしましては、情報システムの課題を含めまして、搬送体制に関する問題が提起されました。一方、直近の問題といたしまして、この十一月に墨東病院が努力してもなお一人当直とならざるを得ない日に限りまして、他の総合周産期母子医療センターで支える体制をとることといった内容が話し合われております。
 具体的には、杏林大学医学部付属病院の総合周産期母子医療センターを支援する多摩当番と同様の仕組みでございますが、墨東病院が一人当直の際にとりますいわゆる墨東当番というような体制を構築しますと同時に、墨東病院の一人当直の日には、墨東病院が多摩当番を担うこととなっている場合には、そのかわりを他の周産期センターが担うというような内容でございます。
 ちなみに、この十一月、過ぎましたけれども、八日、九日の土曜日と日曜日につきましても、墨東病院では一人当直になっていましたために、福祉保健局による調整を行った上で、バックアップ体制がとられたところでございます。

◯野上委員

  多摩当番の区東部版の体制の構築ということですね。墨東病院の産科当直医が一人になるときは、都内のほかの総合周産期母子医療センターの指定病院がかわりに搬送を受け入れる輪番制の導入を検討したということだと思います。
 最後のとりでである総合周産期母子医療センターを地域全体で支えていこうとすることは大変効果的なことであり、医療機関、妊婦さんの双方にとって望ましいといえるのではないでしょうか。体制の構築に関しては福祉保健局ということですけれども、病院経営本部も協力して、都として速やかに体制構築を図られることを要望しておきます。
 しかし、こうした体制を構築しても、それはあくまでも緊急避難的なものであり、産科周産期医療体制の確保という重要問題には、その背景に医師不足と産科医師離れという、都だけでは解決しがたい根本的な問題があります。産科医師の確保は依然厳しい状況であり、これまでも病院経営本部が、年収にして約三百万円ですかね、アップして、医師の処遇改善などに積極的に取り組んできたことは承知しておりますが、さらに医師の勤務環境の整備などの対策も必要であると考えます。
 そこで、都立病院の医師の緊急環境改善についての都の今までの取り組み及び今後の取り組みについて伺います。

 

〇及川経営企画部長

 産科医師の確保、定着策といたしまして、処遇改善のほかに、勤務環境の改善により医師の病院離れを抑制していくということは、極めて重要というふうに認識しております。その中でも、産科医に占める女性の割合が増加をいたしていますことから、女性医師が出産、育児を契機に離職しないための対策が必要でございます。
 このため、二十年七月より育児短時間勤務制度を導入し、二十年四月に墨東病院及び府中病院、そしてこの十月には大塚病院の院内保育室の二十四時間化を実施したところでございます。
 また、昨年度よりERへの医療クラークの配置を進め、医師の事務作業の負担軽減も図っているところでございます。
 今後につきましては、院内保育室を一層充実させるとともに、産科医師の過酷な勤務環境を改善するため、産科への医療クラークの配置なども行っていくこととしております。
 これらにつきましては、今回の東京緊急対策Ⅱに盛り込まれた施策としまして、必要な経費を補正予算として計上した上で、着実に事業を実施していきたいというふうに考えております。

◯野上委員

  現場の先生方はぎりぎりの状態でやってきたとか、本当に綱渡りだったとかという産科医師の言葉があったとお聞きしておりますが、そうした意味でも都立墨東病院は踏ん張って、踏ん張って、頑張ってやってきたのではないかというふうに思っております。
 都立墨東病院は、診療機能も幅広く、都区部医療圏の中心的な病院としてなくてはならない存在であります。こうした悲しい事態が二度と繰り返されないように、早急に総合周産期母子医療センターとしての機能を回復することを望みます。
 さらに、今回の事案では、周産期医療と救急医療との連携の重要性が改めて問われました。具体的に、今後この仕組みを変えていく必要があります。これはまた、今後の福祉保健局の質疑の方でもやっていきたいと思っております。
 妊産婦の救命の観点から、救命救急センターとの役割分担が重要であります。我が党の緊急申し入れでも言及しておりますが、病院経営本部としても、このハイリスク妊産婦への対応を強化するため、総合周産期母子医療センターとERとの連携強化について早急に検討を行うことを求めて、次の質問に入ります。
 次に、産科医療補償制度について伺います。
 死亡者を示す数字というのがあります。一万人、三万人、五万人ということでございますが、昔からよくいわれておりました。
 一万人というのは、交通事故で一年間に亡くなる人の数ですね。これはもう年々減ってきております。現在では大体六千人台ということで、シートベルトの着用とか飲酒運転に対する厳罰、それが功を奏しているのではないかと思います。
 三万人というのは何でしょうかって、クイズみたいになっちゃった。これは自殺者の数で、年々増加傾向にあります。特に中高年の男性が多く、この冬を乗り越えるには厳しい時代状況で、これはますます気をつけなくてはならない対策の一つです。油断ができません。
 最後五万人、これは、わかる人いらっしゃいますでしょうか。といって、クイズじゃないんですけれども、これは医療ミスで亡くなった人の数だということで、新聞報道等で私たちは知ることになるわけです。初期的な、薬の投与の量を間違えてしまったとか、患者を取り違えたということもありますけれども、また、この医療分野は専門性が高く、手術などは密室で実施されるので、素人には余りよくわかりません。最近は、手術している場面をモニターで観察できるような病院もありますけれども、まだまだ閉鎖されている領域といえるのではないかと思っております。
 医療の中でも訴訟に至るケースが多いのが、ほかの科に比べると、やっぱり産科というのは圧倒的に多いのではないかと思います。そうした訴訟リスクが多いということで、医学生が産科医を選択しない。このことも、医者そのものの数はふえているのに産科医が不足している原因の一つではないかと思われます。
 そうした中で、産科医療補償制度、いよいよ来年の一月から実施されます。産科医不足の改善あるいは産科医療提供体制の確保という重要な課題を解決するため、無過失補償という考え方を取り入れて検討が進められてきた制度であります。
 案ずるより産むがやすしという言葉がありますけれども、これは非常に大きな間違いで、お産は非常に危険を伴うものだと思っております。分娩により赤ちゃんに障害が発生した場合は、過失の有無の判断が困難な場合が多くて、裁判で争われる傾向があります。特に脳性麻痺の場合には、通常のお産であっても一定の件数で発生しているということで、先ほど田代委員の中にございましたが、千件に一件あるいは二件ぐらいの発生率ということでございます。
 このような状況のもとで、医事紛争のリスクが高いことが産科医師不足の理由の一つであるということで、我が党でも少子対策プロジェクトで、安心して子どもを産み育てられる社会を目指してという観点から、産科医不足を解消するためには、安心して産科医師として仕事ができるような環境づくりが大事だということで、医療事故にかかわる無過失補償制度とADR制度に関する検討ワーキングチームを立ち上げて、議論を重ねてきた経緯がございます。
 今回、産科医療補償制度が新たに創設されますが、まず、この制度創設の目的と経緯について改めて確認をいたします。

〇都留サービス推進部長

 この制度は、分娩に関連して発症した重度脳性麻痺の赤ちゃんとそのご家族の経済的負担を速やかに補償するとともに、原因分析を行って、再発防止に資する情報を提供することにより、紛争の防止、早期解決及び産科医療の質の向上を図ることを目的として創設されました。
 制度創設の経緯でございますが、平成十九年二月に、財団法人日本医療機能評価機構に産科医療補償制度運営組織準備委員会が設置され、平成十九年五月に、政府・与党の緊急医師確保対策に産科医療補償制度が盛り込まれました。その後、平成二十年一月に産科医療補償制度運営組織準備委員会報告書が公表され、本年七月から医療機関の加入登録が開始されたものでございます。

◯野上委員

  この産科医療補償制度は、患者さんの安心と安全を目指す重要な機能であるとともに、紛争防止の機能もある制度であります。産科医療の崩壊を一刻も早く阻止する観点から緊急に立ち上げた制度です。既に新聞等でもこの制度については取り上げられておりますが、この制度は仕組みが複雑でわかりにくいところもあります。
 そこでお聞きいたしますが、この制度の仕組みについてなんですが、産科医療補償制度の加入は、どの医療機関までが加入するのでしょうか。

〇都留サービス推進部長

 この制度は、財団法人日本医療機能評価機構が民間損害保険会社と契約する産科医療補償責任保険に、全国の分娩を取り扱う医療機関及び助産所が加入する仕組みとなっております。

◯野上委員

  この補償対象者は、どういう条件で入れるんでしょうか。

〇都留サービス推進部長

 補償対象者でございますが、基本的に出生体重二千グラム以上、かつ在胎週数三十三週以上、身体障害者等級一級、二級に相当する重度脳性麻痺のお子さんでございます。
 ただし、出生体重、在胎週数の基準を下回る場合でも、在胎週数二十八週以上のお子さんにつきましては、分娩に関連して発症した脳性麻痺に該当するか否かの観点から、個別に審査が行われます。
 また、先天的な要因等につきましては、補償の対象外になることがございます。
 平成二十一年一月一日の分娩から補償対象となります。

◯野上委員

  保険料は、一分娩当たり三万円の掛金を支払うことになっていますが、補償金としては、どういう形で、幾らぐらい支払われるのでしょうか。

〇都留サービス推進部長

 分娩取扱医療機関は、一分娩当たり三万円の掛金を支払いますけれども、運営組織であります機構が補償対象と認定いたしました場合、この掛金を原資に、看護、介護資金としての一時金が六百万円、分割金として年間百二十万円が二十回、合わせて三千万円が保険会社からそのお子さんに支払われます。

◯野上委員

  この制度の見直しについては、どうなっていますでしょうか。

〇都留サービス推進部長

 遅くとも五年後をめどに制度内容を検証し、適宜、必要な見直しが行われるとのことでございます。

◯野上委員

  全国の分娩を取り扱う医療機関が保険に加入し、ご家族に総額三千万円という補償金が支払われる制度であることがわかりました。
 ところで、掛金、保険料なんですけれども、加入した医療機関が、運営組織である財団法人日本医療機能評価機構に、一分娩につき三万円を支払うということになります。都立病院は年間約三千件余りの分娩取扱実績があると聞いているので、新たに年間約九千万円を掛金、保険料として負担することになります。
 この掛金相当分については、実質的には妊産婦の方の負担とならない仕組みとなっていると聞いておりますが、この掛金相当分はどのような仕組みで負担されていくのか説明してください。

〇都留サービス推進部長

 この掛金相当額は、分娩費用の一部として妊産婦から徴収されることになります。そのため、都におきましても、徴収のための規定を規則に定めてまいります。
 また、今後、国の政令が改正され、この制度が開始される平成二十一年一月一日から、妊産婦が受け取る出産育児一時金が掛金相当分の三万円増額されて、現行の三十五万円から三十八万円となります。
 したがって、妊産婦の実質的な負担は生じない仕組みとなっております。

◯野上委員

  実質的な負担が転嫁されないということは、出産を控えるお母様方にとってもありがたいことだと思います。すべての妊婦さんがこの制度の対象となるように、都立病院も含め全国の産科医療機関が加入し、妊産婦さんに周知を図っていくことが重要であります。
 その対象となった医療機関の制度への現在の加入状況及び都立病院の対応状況はどのようになっているのでしょうか。

〇都留サービス推進部長

 最新情報でございます、十一月四日時点における全国の分娩を取り扱う病院、診療所、助産所の加入率は九五・一%でございます。都内につきましては、十月二十四日のデータが最新でございますが、九二・七%の加入率でございます。
 都立病院では、分娩を取り扱う五つの病院が対象となりますが、すべて加入済みでございます。
 今後、都立病院といたしましては、妊産婦さんに十分に周知を図っていき、二十一年一月からの制度開始に向けた準備を進めてまいります。

◯野上委員

  都立病院の五病院すべてが加入していることを聞いて、安心いたしました。しっかりと妊産婦さんに周知し、今後必要な手続をきちんと進めていってもらいたいと思います。
 ところで、新聞報道などで、制度導入に当たってはまだまだ多くのさまざまな課題があるということですけれども、東京都が認識しているこの制度の課題というのは、どんなものがありますでしょうか。

〇都留サービス推進部長

 この制度に関しましての課題といたしましては、例えば保険の仕組みが複雑であることが挙げられます。出産育児一時金が増額されるため、妊産婦の負担は実質的にはございませんが、一時的には、分娩費用をこれまでよりも多く用意する必要が生じます。このため、先日の新聞報道にありました出産育児一時金の医療機関への直接支給制度の導入は、効果が大きいと考えております。
 また、分娩取扱医療機関への事務負担もかなりのものになると予想されます。
 さらに、新たな制度でございますため、妊産婦さんに対しましても十分な周知が必要であると考えております。

◯野上委員

  さきの後期高齢者医療制度、それもすごく事務負担が大変だったということがありますので、同じように事務負担に関しても、なかなか時間がないので、現場の作業というのは大変なものがあるのではないかと思っておりますが、少しでも混乱がなくなるように、東京都はどういうふうにされていくのでしょうか。

〇都留サービス推進部長

 都立病院といたしまして、共通の様式をつくりましたり、事務手順を共有化いたして進めてまいりたいと考えております。

◯野上委員

  まだまだ課題がありますが、例えば報道によりますと、医師の間には、補償制度があるということで、そうなってくると、例えば二億とか一億とか、そういう大きな訴訟で取れるということで、訴訟を誘発してしまうのではないかという現場の医師の懸念とか、先天的な脳性麻痺の方は補償対象外ということも課題になっております。
 しかしながら、産科医師の長年の悲願でもあった、安全・安心な出産環境を一刻も早く整備するということでは、本制度の創設は大変大きな意味があるのではないかと思っております。
 今後遅くとも五年以内に制度改正が行われるということをにらみまして、必要な見直しがあれば、妊産婦、産科医師双方にとって、さらによりよい制度となっていくようにしていく必要があると思います。都としても、この制度運用の状況をしっかりと見きわめ、よりよい制度となるよう建設的な意見を発信していくことを求め、質問を終わります。
 以上でございます。

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